2008年03月24日

The Nationalists are back in Taiwan

An emphatic win for the Kuomintang’s Ma Ying-jeou

22日の総統選は、馬英九の圧勝に終わった。従来民進党が強かった高雄市をはじめ南部でも、国民党がより多くの票を集めた。高雄市は、フランキー謝氏がかつて市長を勤めた地盤であった。そして、国民党に忠誠を誓う「外省人」が多い北部地区とは違って、南部は「本省人」としてのアイデンティティが強かった。しかし、島民は国民党を大差で選んだ。台湾の島民は、アイデンティティよりも現実を選んだ。「外省人」と「本省人」の対立を叫ぶ民進党よりも、台湾人としての融和を笑顔で説く馬英九を取った。自由を圧殺する中共の脅威を叫ぶ民進党よりも、同じ言語を話す大陸への経済的チャンスを阻む足かせを取り除けと唱える馬英九が選ばれた。
本選挙の結果は、中共のみならず米国にとっても喜ばしいものであった。ブッシュ大統領は、早速馬氏に祝電を送った。ただし、日本にとって馬氏の勝利は、白黒付け難い。馬氏は大陸と島民の両者に色目を使うのが、政治的スタンスである。彼は、そのためにこれまで日本に対して見る目が冷たかった。彼が市長を勤めた台北市の公園には、日本統治時代の悪政を批判する展示がよく見られる。大陸と島民を繋げるための叩き台(いや、殴り相手)として、日本は最も都合がよかった。馬氏は、当選後の表明において日本のことをよく知らないと率直に認めている(だから勉強したいとも、言っているが)。少なくとも政治レベルにおいては、台湾は日本よりも中共へと力点をずらしていくことになるかもしれない。

2008年03月22日

Kamikaze politics

How Fukuda and Ozawa might both self-destruct

揮発油税をゼロベースからの見直しに持ち込むことに成功した小沢氏であるが、彼じしんの信条は本当に改革派なのであろうか?民主党は、市場主義政党なのかそれとも社会民主主義政党なのか、さっぱりわからない鵺である。自民党もまた、農村の保護を目指しているのか小泉式の資本の論理優先主義なのか、判然としないジキル博士である。鵺とジキル博士が、二大政党として日本政治のゲームをしている。政治は、国民の集団意識を映す鏡である。全てに和を求める日本人の願望が、このような双頭の怪物を作り出してしまった。
記事は、両党が改革/保守の断層線で互いに割れて、シャッフルされる可能性について言及している。首相退任後しばらく動かなかった小泉氏が、最近発言を盛んにしている。彼は、はっきりとした資本家・大企業雇用者を擁護する路線で、わかりやすい。だが両党内でいま改革を唱える者たちは、自分が日本国民の半分を敵にする覚悟が、果たしてあるのだろうか?日本のような老大国では、全ての者がよい目を見る展望は、もう開けないのである。
土曜日午前現在、本記事に一つもコメントが付いていない。コメントの不在が逆に、部外者が日本に対して期待していることを、だいたい表している。日本はいきなり変わるには、すでに大きすぎてしかも老いすぎている。理想とするべきは、もはや織田信長でも坂本龍馬でもない。大国を漸進的に改革する、かつての大英帝国の政治家たちのような粘り強さが、求められる。

2008年03月21日

The China card

Events in Tibet are bad news for the nationalists in Taiwan's presidential elections

民進党は、総統選の土壇場になっていつも神風が吹く。1996年には、中共が台湾海峡にミサイルを打ち込んでかえって大陸への不安を高めた。2004年には、阿扁が撃たれて(誰が撃ったのか?)同情票を集めた。そして今回は、チベットである。一月の立法委員選挙では、国民党の圧勝だった。もし何も起らなければ、土曜日は馬英九が大差で勝利していたことであろう。同日に行なわれる「台湾」名称での国連加盟申請の是非の国民投票についても、民進党の悪あがきとして一笑に付されていたはずであった。
阿扁の家族が絡む醜聞は、確かにひどすぎた。民進党が愛想を尽かされても、致し方のないものであった。しかし、総統選一週間前になって、この週末の投票は国内での人気投票の次元ではなくなってしまった。当初自治を認めたはずのチベットに軍を送りつけることしかしない大陸を信用するのか、否か。その選択が、島民に突きつけられる。

2008年03月20日

Silent spring

Japanese companies pay their workers little, but it may cost them a lot

Strikingly, as the cost of imports such as oil and raw materials has soared, the price of finished goods has remained stable and profit rates have not declined much. What explains this odd situation?
― 驚くべきことに、石油・原材料といった輸入品の価格は急騰しているにもかかわらず、最終製品の価格は安定したままであり、かつ利潤率はそれほど下落していない。この奇妙な状況は、どうやって説明されるのであろうか?

福田首相が、日経連に対してもっと賃上げを許容してほしいという、異例の声明を出した。しかし、今年の春闘はまたも襲来した円高のおかげで、経営側の財布は厳しい。
上の問いに対して、一橋大の深尾教授は企業が賃金を下げることによって、労働生産性を上げているためだと説明している。すなわち、アウトプット一単位に占める賃金の割合が減少すれば、それは労働一単位が生産する額が伸びたことと同一となる。現在の日本で、この労働生産性の上昇が技術進歩(これが、真に国民の生活水準を上げる)によって行なわれているのであろうか?―No。
本記事の図は、ここ十年間の日米欧の賃金上昇率の推移を示している。日本だけが、連年マイナスあるいは伸び率ゼロで推移している。正規社員を削減して派遣・パートに転換し、その上高給の団塊世代が退職しているために、賃金水準がずるずると下落しているのである。
記事は、長期的に見てこの傾向は正規社員の比率を減らすことによって企業が技術訓練への投資を怠るようになり、日本経済に悪影響を及ぼすであろうと警告している。去年から今年にかけて、大企業は団塊世代の穴埋めのために新規大量採用を再開している。小泉時代に流行った成果主義賃金は、その弊害が指摘されて流行遅れになろうとしている。日本経済の強みは、昔から変わらず均質な民族をじっくりと育てる稲作的人材育成にあるに違いないのだ。イチローのような華麗な渡り職人が日本人の理想であるような時代は、2000年代の終わりと共に去ろうとしている。

Trashing the Beijing Road

Our Beijing correspondent happened to be in Lhasa as the riots broke out. Here is what he saw

「北京道を屑まみれに」―今回の記事のタイトルが、チベット3.14暴動の深層を象徴している。北京道とは、中国にあるのではない。ラサのメーンストリート、ポタラ宮とジョハン寺の前を通る道が、中国の首都の名前にされているのだ。これは、蒋介石が台湾を占領したときに台北の通りに中国本土の都市名を付けて回った故事を、思い出す。要は、中華帝国主義丸出しの態度が、ラサを始めチベット全土で蔓延しているのだ。チベット「自治区」の首長は、漢族である。ラサの商店は、ほとんど漢族と回族(中国土着のイスラム教徒)で占められている。そして、今回の暴動で襲われたのは、漢族と回族の商店であった。チベット族の商店が暴動が始まると防護のしるしを即座に表に出したのは、インフォーマルな反乱のネットワークがチベット人のうちであったことを、匂わせる。
反乱は、四川省や甘粛省にも広がっている。ここにもチベット人は住んでいる。というよりも、もともと清代に雍正帝がチベット分割裁定を行なうまでは、成都より西の高原地帯はぜんぶチベットであった。中国人が絶景だなどと言って観光名所に喧伝している高原の山紫水明の土地は、昔の漢人が知っていた風景ではない。
今年六月には、チョモランマを聖火リレーが通って、その後ラサに入る予定である。このイベントが待っているのに、ラサで戒厳令が出来るはずもない。よって、実際には人民解放軍が出動しているはずなのに、「警察が交通整理をしている」と言っている。五輪を控えて国際社会が恐ろしいようで、当局は異常におとなしい。しかし、しばらくおとなしくしていれば世界は中国を許容してくれるかと思ったら、見当違いであろう。現在欧米のマスコミは、二十年前の戒厳令をはるかに越えて注目している。
おそらく、北京はダライラマに譲歩せざるをえないところまで追い込まれるであろう。このまま頬かむりをしていると、各国政府が五輪をボイコットしなくても、選手が自発的にボイコットする輪が広がってしまうだろう。本記事やNYタイムズも指摘している通り、ダライラマと和解した方が北京にとっては中国の度量を世界に示すためにも、得策なのである。ダライラマは自治を望んでいるだけだし、その範囲も現在のチベット自治区(清代チベットの1/3でしかない)以上を望んでいない。長い目で見て、どちらが得であるか。北京は漢族を大挙してチベットに送り込んでチベットを漢化してしまうことを目論んでいるが、曹操の屯田制ではあるまいしもはや現代に通用する政策ではない。今回の暴動に見られたように、もしダライラマがいなくなっても、チベットではこのままではテロリズムが激化するばかりであるに違いない。

Wall Street's crises

What went wrong in the financial system—and the long, hard task of fixing it

By 2007 financial services were making 40% of America's corporate profits—while employing only 5% of its private-sector workers.
―2007年までに、金融サーヴィス業はアメリカ企業の40%の利潤を上げていた。しかし、私企業部門のわずか5%しか雇用いていなかった。

ゴールドマンサックスの推計によると、住宅市場の下落による損失の総額は1.1兆ドル。このうち外国資本の持分と保険会社などによるレバレッジされていない投資(つまり、自己資本の範囲内で損失を賄えるとみなされる分)を除けば、アメリカ金融機関の損失は3000億ドル、すなわちGDPの2%程度であるという。これが、おそらく今後公的資金注入によって救済されなければならない額となるであろう。
これまでの金融業界の異常に高かった利潤は、そのかなりの部分が真の生産性ではなくて、単に運が良かったからであった。市場とは、上がる時もあれば下がるときもある。
もし1億ドルの自己資本を持っていて、去年1億ドルの破格の利潤をFXとかLBOとかの危ない投資で上げたとしよう。たまたま、去年は好景気で全ての資産がインフレであった。利潤で上げた1億ドルは、CEOとファンドマネージャーと株主配当で分け取りして、彼らはわが世の春を謳歌していた。ところが今年は資産価格が調整に入って、レバレッジのせいで評価損が増幅してとうとう1億ドルの含み損を抱えてしまった。FRBの投資銀行への緊急融資は、このような会社をつぶさないために行なわれた。放っておけば、自己資本を毀損してこの会社はつぶれるまでである。だがもしつぶれれば、この会社に金を貸していた別の会社までが、巨額の損失をこうむる。そうなれば、核分裂のごとき連鎖反応が起るであろう。
だが、金融界全体で見れば、このような会社が山ほどある。その全てが、レバレッジの効かせ過ぎで、そのうちつぶれる運命にある。そこで、もはや政府が資本なり融資なりの形式で、彼らの毀損した自己資本を底上げしてやらなければならなくなる。おそらく日本が行なったように劣後債や優先株のような条件となるであろう。金貸してやるから、もう一度経営を立て直して返せ、というわけである。
日本の銀行の例では、怒涛の合併によって経営コストを削減し、長年かけてようやく公的資金を大方返済した。日本の銀行はコスト過剰体質であったため、リストラの余地が大いにあった。日銀もゼロ金利を設定して、彼らが貸し借りの利ざやを取れるように支援してやった。
米さんの今後は、どうだろうか。あのCEOやファンドマネージャーの高給は、確かに最大のリストラ可能な分である。しかし、彼らはどれだけこれまでの自分たちの稼ぎが単なる幸運のせいであったと、認識するであろうか。いったい政府から注入された資金を返済するために、果たして奴らが低い報酬でこれまでのような放漫経営を改めて、努力するだろうか。
日本の銀行は、デフレにも関わらずよく政府の資金を返済した。しかし米さんの銀行は、そこまで殊勝だろうか。日本とは違う道で、楽に返済できるコースを熱望するような気がしてならない。― インフレさえ起れば、借りた金の価値などわずかの間に吹っ飛んでしまうのである。今度は政府のインフレで国民が苦しんだ結果であるにも関わらず、奴らはそれを自分の経営努力だと誇るかもしれない。

2008年03月19日

Disowning racism

Barack Obama speaks about race

If he fails to keep defining himself aggressively, his pastor’s paranoid and angry comments will let opponents do it for him.
― もしオバマ氏が自らの信条を明確にすることに失敗したならば、彼の牧師が行なった偏執狂的で怒りに満ちたコメントが、彼のライバルに利用されることとなるであろう。

オバマ氏のアドバイザーで20年来の宗教的師匠であったジェレミー・ライト氏が、黒人の苦境の元凶であるとして白人を呪いアメリカを呪う、激烈な演説を行なった。その演説内容が、TVとネットで全米に広まってしまった。間が悪すぎる。アメリカ人は、いまどこまで落ち込むかわからない不況とインフレで、戦々恐々としている。そんなときに、不和を煽り立てる演説を行なうような宗教家の弟子であるオバマとは、一体何者だ?
オバマ氏は、ライト氏の発言を誤りであるとするレトリック巧みな演説を行なった。しかし、長年の師であるライト氏を排除することは、しなかった。誠実の人であるべき彼は、そうするしかなかったであろう。だが、これは彼の選挙運動にとって、痛烈すぎる打撃ではないか。オバマニアは別として、それ以外の中高年層にとってライト氏とオバマ氏との関係は、おそらく最悪の印象を与えることになるであろう。彼は、まだ若い。4年後も8年後も、チャンスはあるさ、、、ちょっと早いか?

Aggressive easing

The Fed flexes its monetary muscle. Will it help?

記事の題は"Aggressive"となっているが、市場に言わせればずいぶん控え目なFRBの金融緩和であった。市場は、1%の利下げすら予測していたのだ。
18日、ダウは420ポイントも上がった。月曜日に95円台にまで上がったはずの円は、19日朝現在で99円台。ものすごい投機相場だ。好材料といえば、レーマンとゴールドマンの決算が予想以上に良好であったこと、それだけであった。レーマンが第二のベアスターンズになりそうにないという安堵感が、買いにつながった。その買いが、一日限りのユーフォリアを生み出した。IMFが表明したサブプライム融資での損失は予想の4倍の8000億ドルに昇るだろう、という昨日の警告は、とりあえず明日以降の売り材料として無視された。
相場の流れには、戻し局面が必ずあるものだ。今回の上げは、あまりにも売られすぎた地点からの戻しであろう。これで長期トレンドが反転するかどうかは、疑問である。いまだに住宅市場は暗鬱で、長期の底入れを確約するべきマクロ状況は好転していない。外貨預金を契約するならば、今週初めに買って今週末にでも売り抜けるべきであったな。IMFによるとサブプライム融資での損失は、米国とEUに集中している。金融セクターがほとんど無傷の日本円が、今年半ばにかけて上昇していく可能性は高い。米国当局は、貿易収支を改善するためにある程度までのドル切り下げを目論んでいるに違いない。

2008年03月18日

Bear’s pits

JPMorgan Chase takes over stricken Bear Stearns. Panic is in the air

By ditching its longstanding rule about lending only to commercial banks and extending this facility to investment banks, the Fed is in effect admitting that it faces a different sort of financial system—one in which dealers pose as much of a threat to stability as lenders.
― FRBは、長い間守られてきた商業銀行だけに貸付を行なうというルールを破って、投資銀行にまで保護の範囲を拡大した。これによって、FRBは事実上、別種の金融システムの世界と対決することになった。すなわち、ディーラーが貸付業者と同じぐらいに、システムに脅威を与えるという世界である。

ベアスターンズのベイルアウトで金融業界の破綻危機が去ったと思うのは、おそらく早計であろう。すでに市場は、次の容疑者探しを始めている。レーマンの株価は急落し、メリルリンチにすら疑惑の目が向けられようとしている。
保護しなければならないシステムの範囲が途方も無く広がって行きつつある状況は、このまま金融危機が深まって行けばFRBの対処できる能力をすぐに超えてしまうであろうことを示唆している。デリバティブを取り扱っているディーラーがシステムを脅かす危険があるならば、その対象は非常に広く、かつ暗黒の世界が拡がっている。これまで野放しでやりたい放題やって来たヘッジファンドの闇鍋から、今後いったい何が飛び出して来るかわからない。
政府が金融機関に公的資金を投入する可能性が、次第に高まっている。対象とされる機関の数は、もしかして恐ろしく多くなるかもしれない。そうなれば、空前の規模の税金が金融亡者の後始末のために費消されるだろう。クルーグマンは投資会社Pimcoの代表がフィナンシャルタイムズに寄稿した文の内容について、それをわかりやすい言葉で要約すれば「投資家を救済せよ、家主には何もするな」であろうと批評している。システムを維持するためには、大衆から税金とローンで二重に金を巻き上げて、ギャンブラーたちの懐をもう一度温めよというわけであるか。この政策をアメリカ人民に受け入れさせることは、リンカーンやF.ルーズヴェルトでも難しいだろう。
いったいこの十年間の金融市場の活況でアメリカが得られたものは、何だったのだろうか。レバレッジを効かせたデリバティブとは、言葉だけ物々しいがその正体はただのギャンブルではないのか。そして、ギャンブルだから見かけの華々しさとは裏腹に実は大して儲けていない。この記事によれば、1980年から2005までの25年間で、ミューチュアルファンドの投資家が上げた収益の平均値はS&P500の上昇率よりも5%も下回っていたと統計された。すなわち、ファンドマネージャーたちの平均的生産性は、市場平均以下なのである。彼らの巨額な報酬こそが、バブルであった。パーティーは、終わろうとしている。

2008年03月16日

Lhasa under siege

Our China correspondent sends an eyewitness report of the continuing crackdown in the Tibetan capital

"TheEconomist"ラサ特派員からの続報である。
現地では、チベット人と回族との緊張が高まっているようである。回族とは中国土着のイスラム教徒のことで、清代まで漢族と区別されていなかったのであるが、中共政府はこれを一民族として認定している。ラサにはこの回族も移住してして、回族のモスクの近辺で火の手が上がったことの復讐なのかどうか、チベット人への報復のうわさが市中に流れているという。
チベット当局は、月曜日までに暴動の首謀者に投降するべしと最後通告を出している。つまり、この暴動は計画的なものであったと当局はみなしているということだ。果たして、収束するであろうか。もし収束しなければ、北京はどうするであろうか。血の弾圧をすれば、EU諸国のうちから五輪ボイコットが出るかもしれない。これからの数ヶ月は、中南海の今後の国家戦略が見られることになるであろう。世界の世論を無視して、経済だけで世界制覇が出来ると思い上がるのか。それとも、国家解体のリスクを犯してでも、強圧的民族政策を修正することになるのであろうか。

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