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Middle East&Africa アーカイブ

2008年03月02日

A Trip To Bagdad

What lies behind Mahmoud Ahmadinejad’s trip to Iraq at the weekend?

イランのアフマディニジャド大統領が、三月二日よりバグダッドを訪問する。イラクのタラバニ大統領の招請を受けての、歴史的訪問となる。両国の関係は、フセイン政権崩壊後好転した。とりわけ現在のイラク執行部の多数がフセイン政権下でイランに亡命していたというつながりが、両国の接近の背景にある。

イラン大統領のバグダッド訪問の狙いは、二つであるという。一つは、国内向けのメッセージ。イランの経済は、石油価格高騰という追い風があるにも関わらず、現在思わしくない。三月十四日には、議会選挙がある。イラン大統領は、国民に自国の影響力が拡大しているというポーズを取って、自国の経済向上に重きを置かず反西洋の対外政策に傾斜する自分の政治が成功していることを、国民に示したいのだ。
もう一つは、外向けのメッセージだ。イランの核開発を批判する西側諸国に対して、イランがリージョナルパワーであることを見せ付けたい。とりわけ、アメリカに。イラン大統領のイラク訪問を受けて、ブッシュ大統領は発言した。

"He's a neighbor. And the message needs to be, quit sending in sophisticated equipment that's killing our citizens," (ABCNewsより)

― 彼(イラン大統領)は、隣国だからね。メッセージを伝える必要がある。「我が国民を殺すための高級な武器を、送り込まないでくれるか?」と。

シーア派が多数を占めるイラクという国において、イランの影響力は大きい。アメリカは軍を駐留させているとはいえ、イラクはアメリカの植民地ではなく、外交権を持つ独立国だ。イラクがイランに接近することは、テヘランを孤立させたいアメリカにとって疎ましいところだ。そのイラクから、おそらく民主党大統領候補に選ばれるであろうバラク・オバマは撤退することを公約している。このことは、これから秋の大統領選で必ず共和党側から突っ込まれるだろう。オバマ氏はもしやイランと妥協して、イラクの平和を肩代わりしてもらうつもりだろうか?

2008年03月04日

A bloody incursion

Israel's intervention in Gaza

イスラエルの最有力紙"Haaretz"に、ガリラヤ地方におけるドルーズ教徒へのユダヤ人の陰湿な迫害についての一記事があった。ドルーズ教徒とはイスラムの一派で、イスラム主流からは異端とされている。イスラエル政府は建国以来パレスチナのドルーズ教徒と盟約関係を結び、彼らはユダヤ人でないにも関わらず兵役にすら就いているのである。しかし、やはりと言ってよいか、ユダヤ人の国で少数民族への差別に苦しんでいる。他の少数民族であるベドウィンやアラブについても、同様に不満が高まっていることを、記事は伝えている。
その一方で、先週二月二十七日以降始まったIDF(イスラエル軍)によるガザのハマス陣地への陸空からの報復攻撃による破壊の後で、イスラエル陸軍が発表した「ほぼ90%の死者は武装勢力」という主張に対して、イスラエルの人権団体B'Tselemは軍の主張の誤りを主張している。今回のガザ地区への攻撃についても、"Haaretz"の世論調査では64%が「ハマスと休戦・捕虜交換のための会話」を望むという結果が出た。
結局のところ、イスラエルという国は世界の他国と何ら変わることがなく、内に陰湿な排外的気分もあれば人権団体で働く有志もいるし、そして国民は安全な生活を望んでいる。まずその認識を持たなければ、イスラエルを見ることも中東情勢を見ることも誤るであろう。ユダヤ人が全て悪いという反ユダヤ主義は反日主義や嫌韓厨と同じレベルの偏った見方であり、他方に存在するユダヤ人が全て高潔で最も賢明な民族であるという主張もまた、アメリカに多いユダヤ-キリスト教徒選民主義のファンダメンタリスト教祖たちと同じく、偏っている。真実のイスラエル国は、その中間にある世俗国家である。日本やアメリカと、同じように。
当記事の結論は、イスラエルはハマスと対話することによって、パレスチナのアッバス大統領だけを交渉相手としたいイスラエルの立場が傷付くとしても、そうせざるをえないだろうと言う。ガザのハマスとの全面戦争は多大な流血が予想され、その上イスラエルとしてはたとえやったとしても、今の時点でははっきりとした結果の絵が描けない。ハマスを放置して南のヒズボラに育ててしまうリスクと、ハマスを叩いて泥沼に落ちるリスクと、どちらを取るか。次期のアメリカ大統領が誰に選ばれるかによっても、今後の絵は大きく変わってくるだろう。最近のハマスは、イスラエル南部の主要都市を攻撃できるほどにミサイル武装を充実させている。もし飛び道具の大旦那が予想されているとおりイランであるならば、本当はイランをつぶしてしまいたいブッシュ大統領の無念の声が聞こえて来るようだ。

2008年03月07日

Death from within

Palestinian gunman brings slaughter to Jerusalem

ハマスによるカチューシャミサイル攻撃の報復として行なわれたイスラエル陸空軍の攻撃によって、ガザ地区で110人のパレスチナ人が死亡した。それが、先週のことであった。そして今週になって3月6日、エルサレムの宗教学校に銃を持った男が押し入って、ユダヤ人学生8人を撃ち殺した。銃撃者は現場で射殺されて、7日現在いまだにその背後関係はわからない。しかし、この男はパレスチナ人であった。かつ、イスラエルの居住権を与えられているパレスチナ人であった。その理由は、イスラエルが1967年以降東エルサレムを併合したことによって、もとからそこに居住していたパレスチナ人をイスラエル居住者とみなさざるをえなかったからであった。現在の数は、約25万人にのぼる。イスラエルによる東エルサレムの併合は、国際社会によって認められていない。
記事は言う、

That kind of inflammatory talk, though still the preserve of the far right, is slowly becoming more politically acceptable among more moderate Jewish Israelis. If Arab Israelis are now seen as potential terrorists too, the hostility will increase.
[パレスチナ人を国から追放するべきだというような]挑発的な言葉は、いまだ極右の専売特許にとどまっている。しかしゆっくりと、より穏健なユダヤ系イスラエル国民にとって、政治的に受け入れられる言葉となりつつある。もしアラブ系イスラエル国民もまた潜在的テロリストとしてみなされるようになれば、敵意は増していくだろう。

衝撃的事件の後には、世論は極端にぶれやすい。しかし、ガザのハマスだけでも対決して成功するかどうか分からないのに、国家が形式的に市民として認めたパレスチナ人にまで敵対的行為に走るとするならば、理性を失った報いをイスラエルはきっと受けることになるのではないだろうか。ユダヤ人が反パレスチナ人への傾斜を強めるときには、現在は親イスラエルの姿勢を保っているエジプトやヨルダンの国内でもまた、反ユダヤ人の憤りが高まっていくであろう。

2008年03月16日

Bracing for the big one

Despite a short, tantalising lull in Gaza, a wider war may be on the way

Israel's mysterious air raid in Syria last September may have been designed to show that it is not afraid of taking the Syrians on.
― 去年九月に起ったイスラエルのシリアへの謎に満ちた空爆は、イスラエルがシリアと一戦構えることを恐れはしないということを示すために、計画されたのかもしれない。

中東の政治は、中国や日本の戦国時代さながらに調略と合従連衡の世界である。それゆえ、裏面でどのような外交交渉が行なわれて、どのような外交関係が真実であるのか、外部の観察者からは非常にわかりにくい。
戦国時代流の歴史判断をするならば、中東問題の最大の原因はイスラエルという国がパレスチナを奪ってアラブ民衆のほとんど全てから憎悪を買っていることにはない。むしろ、争いの火種を作っているイスラエルという国が、その争いの大きさに比してあまりにも小国に過ぎることなのだ。もしイスラエルがロシアや中国ぐらいの大国であったならば、中東問題がこれほどもつれることもなかったであろう。アラブ諸国はチベットのごとく、踏みつけられてグウの音も出せずにおしまいなはずだ。
イスラエルは、ガザ攻撃を本気で考えているのか?もしハマスを亡ぼすためにガザに本格的侵攻をしたならば、北のヒズボラが動く可能性を否定できない。ヒズボラは、以前イスラエルが叩こうとしてはかばかしい成果を挙げることができなかった。そこで、ヒズボラの根を絶つためにイスラエルはヒズボラのパトロンであるシリアを叩く可能性もありうる。ハマスやヒズボラは民兵組織であって、一般大衆の中に紛れて作戦するために叩こうとすれば必ず市民の犠牲者が大量に出る。それにくらべてシリア軍はれっきとした国家の軍であるから、イスラエル軍は勝てる自信があるかもしれない。上に引用した記事の一文は、そのような仮説から連想されたちょっとした憶測である。
だがハマス、ヒズボラ、それにシリアまで加えてイスラエルが全面戦争に出たならば、第五次中東戦争になる。これまでの中東戦争では部外者であったイランも、今度は黙ってはいるまい。石油の供給がストップして、世界経済は大混乱に陥るであろう。そのようなリスクを、イスラエルのパトロンであるアメリカが許すであろうか。そもそも中東の大掃除をするだけの国力が、今のアメリカに残っているだろうか。記事は、いくつかのリポートが伝える可能性として、ガザ地区からハマスを排除して多国籍軍による協同統治を敷くシナリオがあるかもしれないと、言及している。イスラエルの再占領よりは、魅力的な案かもしれない。多国籍軍の兵がゲリラによって爆殺されることを我慢すれば、であるが。

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