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2014年06月 アーカイブ

2014年06月25日

松本俊一『モスクワにかける虹』

対日平和条約草案に対するソ連側の修正点(一九五一年九月五日)

一、第二条に対しては
「日本国は、、、東沙島、南沙群島、、、新南群島に対する中華人民共和国の完全なる主権を認め、ここに掲げた地域に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」

いわゆる西沙・南沙諸島は1938年に日本が領有宣言したものである。これをサンフランシスコ条約で放棄したことになるが、ソ連案では中華人民共和国が継承することになっている。実際は戦後直後に民国が領有宣言し、サンフランシスコ条約後の1956年に南ヴェトナムが領有宣言した。中共政府の領有権主張は1973年からである。

尖閣・西沙南沙諸島に対する中共政府の領有権主張は、日本の敗戦による日本支配領土の再定義時点において中華民国が領有権ありと主張した領域を継承したものである点である。この主張は、中共が台湾を自国領と主張していることと一体であることがわかる。これらの主張は、太平洋戦後直後に起こった日本領土からの取り分を継続して主張していることにある。その主張に武力を用いていることは、国際紛争の平和的解決を目指すべき国連常任理事国の行うべきことでなく、互いに覇権を目指さないと宣言した日中条約の文言にも違背する。

中共政府の外務筋が近年沖縄列島の日本領有権に疑問を呈しているような主張を一部散見するが、これは太平洋戦後に作られた秩序の破壊再編成を目論む主張であって、上の諸島の主張とは全く別次元の、国際秩序破壊的な構想であると考えなければならない。

松本外交官のメモワールを読むと、外交に必要なのは一に政治家のビジョンと決意、二に実務外交官の国益を守らんとする意思と交渉相手と粘り強く話し合う対話力であろう。河野農相が外交の素人であるにもかかわらずソ連首脳と堂々と交渉する力を見せたことに松本外交官は感嘆している。意思・知識・それから人間としての度量。これらが必要だということだ。2002年の日朝交渉との落差は大きかった。

2014年06月26日

『昭和天皇とワシントンを結んだ男』青木冨貴子

カーンこそは、占領期から戦後の日本政治の舞台裏で暗躍した黒幕で、保守本流の政権維持を裏から支えた知られざる”工作者”だったと日本の新聞は報じた。(p21)

戦後日本は、アメリカ、ソ中の謀略の草刈場であったことであろう。小泉政権時における鈴木宗男事件の背後にアメリカの意図があったことは、十分に予想される。鈴木氏と外務省一派は、中央アジアにおいて米ロの間のバランサーとして日本が振舞う道を模索しようとしていた。アメリカがこれを嫌ったことは、想像できる。

渡辺武日記

(ダレス)ロシア人の性格は、ヒトラーなどとちがって、じっくり将棋を指すようなやり方で、勝算のない戦争はやらないと思う、、、現在の戦力は五対一くらいでアメリカの優位である。これが続く限り戦争はない。もし西独および日本がロシアの手に落ちた場合、この比率がロシアの有利となり、戦争の危機にさらされる。したがって、アメリカは日独をロシアの手に委ねることはできない。

当時のソ連は、コミンフォルムを通じた宣伝戦を用いて、西側諸国の世論を反米親ソに向けて駒を進める手段があった。今の中国は、外国に宣伝戦を仕掛ける手段がない。日本としては、①中+露のブロックを阻止することによって、東アジアでの中国の覇権をかわす、あるいは②日+米のブロックを強固に留めて、中国が手を出せないようにする、この二つの課題を平行して進めることが理想であろう。


パケナムは、日本人の好んだ「アジアのスイスたれ」は、一億玉砕などを叫んだ戦前のスローガン同様のたわごとであり、日本独特の不合理であると苛立ちをかくさずに記している(p138)

当時の日本世論「アジアのスイスたれ」をマッカーサーが支持していた理由は、沖縄に恒久的な米軍基地を置くからであった。もしマッカーサー案が実現していたら、戦後日本はどうなったであろうか-沖縄は、必ず別の国となっていたに違いない。極東のキューバ・ニカラグアと化して、さらにベトナム戦争化していた可能性もあったであろう。その可能性を捨てたのが、今の戦後日本である。

日本は、沖縄と一体となって共に現実的な安全保障を構築する責務があるだろう。

2014年06月27日

『新・帝国主義の時代 右巻』佐藤優

「陽に忠君愛国を説いて陰に私利を営むような教育家はかえって沖縄人のこの最大欠点を増長させるばかりである』(伊波普猷の言、p12)

裏表のない教育者を輸出することは、大日本帝国の植民地経営の根幹をなす手段であった。(例:台湾)

今の統治者の多くは表は善言を言い裏では私利私欲に走る。あるいは表であからさまに私利私欲を言うのが正直者である。これでは内にも外にも人をひきつけることはできぬ。

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