一 蕭家の誉れ(1)
この世界が世界である限り、いかなる土地に行こうとも、春は麗しい。
冬の間は、空は寒々として広く、地平線の彼方まで見渡せたものだ。ところがその視界が、春になるとにわかに曇って遠くの景色が見えなくなってきた。また冬の間には、荒涼とした景色の中でわずかに叫んでいた冬鳥の声が、遠くからもこちらに届いていたものだ。それがどうしたことだろう。遠くの鳥の声が、聞こえなくなった。その代わりに、家のすぐ裏にある林の桃や李(すもも)の木々から、春を告げる小鳥たちの声が流れてくるようになった。見るものも、聞こえるものも、世界がぐんと狭くなったようだ。だが狭くなって、それで十分なのだ。春は、鳥獣草木に虫たちがみな一斉にざわめき始める。その生き物の何重にも重なった声と声で、遠くまで気を配っていてはおちおちと休んでもいられない。とにかく、春の季節であった。