中国歴史小説「知兵之将」

今、鈴元仁は歴史小説をブログで連載しています。

内容は、二千二百年前(!)の古代中国です。

始皇帝・項羽・劉邦・韓信・張良・虞美人・呂太后、、、

これらの名前にピンと来た方、あるいは、

郡県制・儒教・陰陽思想・法家思想・孫子兵法、、、

こういったことどもにちょっと興味をそそられる方、

よろしければ読んでやってください。

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台北四十八時間 06/06/29PM07:00

(カテゴリ:台北四十八時間

土地の人々、土地の神さん



年期の入った建物。戦前のものであろうか。


桃源街の牛肉麺の店を出て、さて次はどこに行こうか。そろそろ夜で今日は晴れているし、台北で一番高いビルにでも行ってみるか。そう考えて、地下鉄西門駅へ。

忠孝敦化駅で降りた。一番近いのはその次の市政府駅なのだが、その途中に見たい所があったので、わざと一駅前で降りた。

忠孝敦化駅のあたりの頂好(ディンハオ)が、台北で最もリッチな店が並んでいる地区だ。西門町あたりのチープな雰囲気は、この辺ではみじんも見当たらない。安っぽい飲食店なども、あまりない。敦化南路を下って、信義路に入る道を取った。いずれも大きなストリートだ。

少し大通りから中に入ってみた。日式(日本風)料理店があった。だが、店頭に備え付けてある生け簀の魚を見て素直に思ったことは、、、


金魚か?


小ぶりの赤々しいお魚がいっぱい泳いでいる水槽を見て、私はとても食欲が出なかった。これがこの地では日式料理らしくてウけるのだろうか。入ることなどせずに通り過ぎて、隣のコンビニでジュースを買った。

本当は、途中に蒋介石の銅像があるのではないかと目当てを付けていたのだ。その銅像はもともと台湾総督児玉源太郎の銅像で、戦後頭だけ蒋介石にすりかえた。そのため、日本の軍服を着た蒋中正閣下(中正は、蒋介石の号)の像が見られるというのだ。しかしながら、どうやら私の勘違いだったようで、途中にそのような像を見つけることはできなかった。ただただ無駄足を続けただけであった。


このビルだけがひょろりと建っている。

歩いても歩いても、目当てのビル「TAIPEI101」は、近づいてこない。そのうち腹が立ってきた。どうしてこのビルは、展望台の入場料が350元(約1200円)もするんだ?この島の所得水準から見て、べらぼうに高い料金設定ではないか。自分たちの島の首都を一望に見下ろして、この国の偉大さを人民たちに感得させたいと願うのだったら、もっと安くするべきだ。市政府駅から無料のシャトルバスが走っているそうだが、そんなものいらん。ひょっとして展望台で一儲けしようというあさましい魂胆があるのではないか?台湾最高のビルなのだったら、テナント料だけで稼ぐべきだろうが。UAEのドバイには、もうすぐ高さ800メートル以上、162階立てのビル(ブルジ・ドバイ)が完成するんだぞ。このビルなんぞは、世界の観光客を引き寄せるアトラクションとしてはもはや全然足りない。行く価値ないな。よし、行くのやめにした。ということで、上の写真一枚撮っただけで、引き返すことにした。


頂好のあたりは確かにこぎれいな街なのだが、そのため日本の通りとほとんど同じような雰囲気であって、かえってつまらない。脱出することに決めた。敦化南路と仁愛路が交差するロータリーの沿いに、二十四時間営業の大書店「誠品書店」がある。その前に、バス停がある。見ると、「敦化幹線」に乗れば行天宮に行けるようだ。しかしながら、乗り方が分からない。そこで、バスを待っているおばさんに聞いてみた。

「麻煩!到這裡、多少錢?」(漢語初級篇)

― すいません、ここまでいくらですか?(バスの路線図を指しながら)

おばさんの答えは、「シーウー」だった。つまり、十五(シーウー)元だ。手元の小銭は、、、13元しかない。困った。バスの中で両替など、たぶんできないだろう。私はおばさんに英語で、"両替できますか?"と聞いた。すると、おばさんは私に5元玉を渡してくれた。そして、近づいてきた285番のバスに乗るよう誘ってくれた。おばさんが待っていたバスでも、行天宮に行くことができるのだ。またもこの地の人に助けられてしまった。歐巴桑、謝謝、謝謝!


ちょっと暗い写真になってしまった。

行天宮は、大同区の東の中山区にある。地元民に「恩主公」と呼ばれていることは、孔廟のおねえさんの話のときにも書いた。このお宮の歴史は、新しい。黄欉(「ファンツォン」でよいのだろうか。1911 - 1970)という実業家が戦後になって始めたものである。現在の伽藍は、1968年にこの地に現れたという。ここで「恩主」と呼ばれている神さまは三国志の関羽や仙人の呂洞賓、南宋の忠臣岳飛などであるが、関羽が神々の筆頭にいる。黄欉の信仰は仏教に儒教・道教の要素を加えた台湾独自の宗教形態で、「齋教」と呼ばれるものらしい。したがってここの関羽は、仏教の菩薩でもある。台湾の「齊教」は仏教と似た点もあれば違う点も微妙にあるらしいが、はっきり言って私にはよくわからない。ともかく、歴史の新しいこの恩主公さんは、最近の台北人にも人気のあるお宮であるという。

孔廟のおねえさんは「今は暑いからあんまり人がいないかもね」と言っていたが、どうしてどうしてお祈りをしてもらうために長蛇の列であった。これでは、暑くない時期にはどんなことになっているのだろうか?


若い人が多く参拝している。

こんなふうに、お祈りのおばさんが線香を持って周りを回り、線香の煙を送り込んで願をかけてくれる。私も並んだ。神社みたいなものだろう。儒・仏・道教ぜんぶ併せた恩主公さんが、一見の旅行者を受け入れないはずがあるまい。

まずこちらからおばさんにお祈りの内容を言って、それをお祈りしてもらうようだ。私は最初「旅遊安全」と紙に書いて、お祈りのおばさんに渡した。だがよく伝わらなかったようだ。そこで、私はその紙の裏に、今度はこう書いて、おばさんに渡した。

恩主公さんの下で願をかけてもらったから、少しは神通力もあるだろう、、、?


taipei008.JPG

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