あと指折り数えられる日で、年が変わる。錦市場の各商店の売り物もまた、正月向けの品揃えとなっていた。京都の食の伝統が、ここには満ちあふれている。正月のハレの食膳に並べられるであろう品々は、さすがによそ者とは一線を画すこの土地独特の文化の重みを感じさせる。
京都は海に遠く、しかも古くから都市文化が花開いていた。その結果として、京都の食は丁寧に仕上げた煮物と、塩や麹を生かした漬物のバラエティーに富んでいる。店頭に並ぶ煮物の数々。中心にあるのは、もちろん京都の正月に欠かせない棒鱈(ぼうだら)の煮物。麩屋町通り西入ル、「不二食品」で撮影。
海には遠いが、京都はすぐそばに琵琶湖がある。だから伝統的な京都の食には、淡水魚が深く食い込んでいる。宮廷料理ならば鯉料理だが、この店先にあるのは、もっと控えめな魚の鮎、どじょう、タニシ、それに琵琶湖のイサザなどだ。御幸町通り西入ル、「のとよ」で撮影。
京都は野菜については本場。京野菜も正月用に正月大根や人参、水菜を揃える。いずれも白みそ仕立ての雑煮に欠かせない食材だ。京都を中心とした関西地方に広がる白みその雑煮は、昔京都の朝廷で白みそがお菓子として出されていたことを庶民がまねたところから関西一円に広まったとか。白みその甘さは、甘いものにありつける機会が乏しかった昔の庶民にとって、めでたいご馳走なのであった。御幸町通り西入ル、「四寅」で撮影した。