中華料理の調味料で、「蠔油」(ハオヨウ)というのがある。日本では「かきソース」と呼ばれるものだ。その歴史は百年以上前にさかのぼり、1888年に李錦裳という広東省の人が干しカキのエキスから開発したものであるという。彼が創立した会社「李錦記」は、今や日本でも調味料ブランドとしてよく知られている。一見醤油のような黒い液体はカキのうまみの固まりであって、これを一さじ料理に入れればじつに中華料理らしくなる便利な調味料である。牛肉のかきソース炒めやアワビのかきソース煮などの有名料理から始まって、中華風焼きそばや青椒肉糸(チンジャオロースー)、八宝菜などにも入れる。ただ非常に塩っぽい調味料で、入れすぎは禁物である。さて今回の八宝菜は、試みに和風だしを使ってみた。和風のおだしはもとよりかきソースと全く合わない。その上に、にんにく、こしょうとも合いようがない。こしょうを使わないから、豚肉はちょっと使いづらい。そういうわけで肉を鶏肉にして、香味野菜はしょうがのみじん切りを使った。このように調味料を変えれば、他の素材も連動して動かさなければならない。それもまた、料理法をあれこれと設計する際の、面白いポイントなのだ。
(以下は、1人前の分量)
鶏ひき肉 50グラム |
白菜 2~3枚 |
にんじん5cm |
薄あげ 大1/4枚 |
干ししいたけ 戻した状態で大さじ2 |
青ねぎ 1本 |
しょうがのみじん切り 小さじ1 |
《調味料》だし 80ml、しょうゆ 大さじ1と1/2、酒 大さじ2、みりん 大さじ1、塩 小さじ1/4、砂糖 小さじ1/2 |
水溶きかたくり粉(かたくり粉と水を等量) 大さじ1、油 |
白菜は5cm角の角切り、にんじんは1cm幅の狭い短冊切り、薄あげは縦半分に切って1cm幅の短冊切り、青ねぎは2cm幅のぶつ切り、戻したしいたけは薄切りに。
鍋に油大さじ1を入れて、まず白菜とにんじんを入れて炒める。
白菜とにんじんに油が回ってつやが出たら、さらに薄あげと干ししいたけを加えてサッと炒める。炒まったら、いったん取り出す。
改めて油少量を入れて、鶏肉としょうがのみじん切りを炒める。鶏肉が炒まって、油が浮いて出るまで炒める。
野菜を投入して調味料を加え、上に青ねぎを散らす。このまま1~2分間煮込み、最後に水溶きかたくり粉でとろみを付ける。
和風なので、こしょう・にんにく・かきソースは使わずにまとめた。