何だか日本の国をゆるがすような食品にまでなってしまった牛丼。普通に作ってはチェーン店のものにかなうわけないから、ちょっと工夫しよう。そういうわけで、温泉卵を上に乗せてみた。丼自体はもちろん、「つゆだく・ねぎだく」で。これ最強。
私は牛丼にさほどの愛着がないので、米国産牛肉の輸入再開によって牛丼が復活したニュースを聞いて泣いて喜んだ人々の胸の内は、はっきりいってよくわからない。ハンバーガーやフライドチキンなどアメリカ発のジャンクフードが席巻している中で、牛丼は純日本食としてジャンクフードの大関クラスのステータスを得た、国産の出世頭だ。バブル時代に大学の先輩で証券会社に当時勤めていた人は、「牛丼一杯を30秒で食うのが、一人前の証券マン」とか言っていた。それほど当時の証券業界は恐ろしく忙しかったというわけで、ネット株取引全盛の今の時代とは隔世の感がある。ともかく、30秒で一杯を平らげることができるのが牛丼であるが、これは箸の使い方に習熟している人でないと、おそらくできるわけがない。さらに言えば、丼や椀を持ち上げて口に「かっ込む」という食べ方のスタイルにも、習熟していなければならない。実は、丼や椀を持ち上げて「かっ込む」という食べ方は、もともと韓国・中国にない。対馬海峡から向こうの世界では、スープ状の食べ物を頂くのには、匙を使う。加えて韓国では、飯にも匙を使う。日本人は匙を食器として原則捨ててしまって箸オンリーとなったために、「かっ込む」食事のスタイルが定着したのである。さらに言えば、熱い味噌汁を持ち上げてもやけどしないためには、磁器や金属の椀ではよろしくない。そのため日本では漆器の椀が汁用の食器として日用品となった。結局、牛丼を30秒で食らえるジャンクフードとして認定できる背景には、日本の食事法が暗黙の前提としてあるというわけなのだ。そう考えるとやはり、手で持って食べるハンバーガーの方が、牛丼よりも「食べ方」の側面からジャンクフードとして世界的な普遍性があるようだ。
(ただし台湾には、漫画でご飯を「かっ込む」シーンが出てくるのを見ると、日本式の食べ方が定着しているような気がする。その原因の一つには、日本と同じ粘りのあるジャポニカ米を食べていることがあるに違いない。)
(以下は、1人前分の分量)
玉ねぎ 中1/3個 |
《割り下》だし カップ1/3、しょうゆ 大さじ2、酒 大さじ1、みりん カップ1/5 |
ごはん 丼一杯 |
卵 1個 |
「AllAbout」に載っていた作り方で、温泉卵を作ってみよう。まず生卵を一昼夜冷凍庫に入れる。写真は一昼夜経過後の卵。凍って膨張してしまって、ひびが入った。しかし中身は流出していない。
1リットルの湯を鍋に沸騰させ、1分間ゆでる。その後火から遠ざけて鍋にふたをし、20分間置く。20分経ったら取り出して、冷水を流しかけて冷やして完成。
その間に牛丼の用意。割り下はくどいくらいに濃い目に作った。このほうが、店の味っぽくなる。そして量は1.5割増しにしている。つまり、つゆだくだ。つゆだくを望まないならば、だしはカップ1/4、みりんは大さじ2程度でいいだろう。
家で作るんだから、玉ねぎもどっさり入れる。玉ねぎはくし切り、牛肉は適当な大きさに切る。
割り下を鍋で沸かして、その上に玉ねぎと牛肉を入れる。後はふたをして煮るだけ。
はい、できた。後は丼に盛ったご飯の上に乗せるだけ。
温泉卵は、見事キレイにできあがった。黄身も白身も程よい半熟の仕上がり。