冬の花で最も詩味があるものといえば、福寿草であろう。雪景色と最も合う花である。だが水仙の花もまた、手軽に楽しめてよい。
ところが水仙も福寿草も、王朝時代の歌には出てこない。水仙は唐から日本に伝来し、絵や歌の世界で定着したのは徳川時代になってからである。一方の福寿草はもともと北日本に自生する花であったが、長らく西日本中心であった文化からは、その存在が見落とされてきた。これも旧正月を飾る鉢植えとして定着したのは、徳川時代のことである。そのせいだろうか、両者ともに唐物くさい異国風の名前が付けられていて、観賞の歴史の浅さを表しているようである。
水仙は、別名「雪中華」と呼ばれる。しかし、今年の冬は全国的に雪が少ない。京都でも、今のところ雪はほとんど見られない。海の向こうからは、狂い咲きの花が咲き始めているというニュースが飛び込んでくる。日本はそこまで暖かくないが、寒くても咲く水仙の花には、本当は雪があった方が似合うというものだ。聖護院横、泉徳寺で撮影。