料理法も漁法も未熟であった昔の時代において、シャケは自然の大いなる恵みであっただろう。川で熊の真似さえしていればどんどん採ることができ、しかも大した処理をせずとも肉厚で美味い。平安時代中期に編纂された法令細目である『延喜式』は、さまざまな宮中のしきたりについて言及した百科便覧的な書物でもある。そこに豊富に載せられた食品の中には、すでに鮭の食べ方として鮭、生鮭、楚割鮭(すわやりざけ。肉を細切りにして干したもの)、鮭子(筋子、すなわち卵巣のこと)、氷頭(ひず。頭の軟骨のナマス)、背腸(せわた。腎臓の塩辛)、内子(こごもり。筋子を内臓を取った腹の中に戻して、干したもの)が記載されているという。日本海の若狭、丹後、但馬、因幡から献上された生鮭は、当時の天皇の食膳にも上された。平安の頃から今までほとんど変わらない形で愛好され続けている魚は、鮭を置いて他はない。鮭は北海道のアイヌたちにとっても重要な食糧であったし、大陸のアムール川流域のツングース人たちもまた大いに活用した。西洋人に至っては、なおさらである。バターによく合うずっしりとした味わいのこの赤味魚に似合う酒はやはり白ワインであって、日本近海で取れる魚だけれども日本の酒とはあまり相性がよさそうにない。
(以下は、1~2人前の分量)
生鮭切り身 2枚 |
キャベツ 適量 |
ピーマン 1~2個 |
にんじん 10cmぐらい |
《みそだれ》合わせみそ 大さじ2、酒 大さじ2、水 大さじ2、砂糖 大さじ1、豆板醤 小さじ1 |
バター、サラダ油、塩 |
今年も秋鮭が出回る季節になった。調理前に、少し塩を振っておく。
野菜はキャベツを基本として、後はあるものを入れればよい。たいていのレシピでは玉ねぎを入れているが、、、冷蔵庫にない!だからパス。そういうわけで、ピーマンとにんじんを使う。
それこそ「お父ちゃんがちゃっちゃと作る」豪快な郷土料理なのだから、本当は野菜など適当に切ればオッケーなのだ。だがしかし、ここでのレシピは軟派流なので、火の通りやすさと食べやすさと、それに完成時の見栄えを考慮に入れて、このように短冊切りで統一。
みそだれを作る。まず、鍋に酒と水を入れて、沸かす。
みそと砂糖を、沸かした酒できれいにのばす。後のことを考えて、ちょっとゆるめに作った。さらに辛味のアクセントとして豆板醤を小さじ1入れてみた。
本式はもちろん豪快に鉄板で焼くものであるが、軟派ゆえに鍋で作る。鍋を熱してサラダ油大さじ1とバター小さじ1を入れ、先に野菜を軽く炒めて、取り出す。こうやったほうが味がつくし、まんべんなく火が通るんだもん。
改めてバター大さじ1を入れて、鮭の切り身の両側に焼き目をつける。
鮭は表面がだいたい焼けたら、それで十分。そこに先ほどの野菜を乗せて、上にみそだれを回しかける。みそだれを少しゆるめに作ったのは、野菜をあらかじめ炒めたのでその分水分が飛んでいるから。野菜から出る水を計算して、みそだれの固さを調節しよう。
落としぶたをして、弱火で8~10分。
完成。
豪快さからは程遠い軟派な作り方だが、味がまとまって美味しくいただけます。