夜の気温は一〇℃を下回り、ようやく朝の空気は「寒い」と形容するに値するところまで下がるようになった。広大な南禅寺境内の紅葉も今朝はところどころ色づいている。一番の見ごろまで、もうすぐだ。
境内前の西正面から南に向って歩けば、金地院(こんちいん)前の道を通ることになる。南禅寺の一塔頭(たっちゅう。脇寺)であるが、独立した構えを見せる堂々とした大寺である。道はこのまま三条通につながっている。
道の脇に、山のふもとの墓地に続いている路地がある。塀の向こうから一本の紅葉がのぞいていた。
路地の入口に据え付けられてある石柱によれば、奥に長谷川玉峰(はせがわぎょくほう)の墓があるという。長谷川玉峰。文政五年(1822)~明治十二年(1879)。呉春(ごしゅん)に始まる「四条派」の画人の一人で、呉春の異母弟である松村景文(まつむらけいぶん、安永八[1779]~天保十四[1843])に学んだ、、、しかし、日本画を見る目があまりない私であって、この人物のことは今調べてみるまで知らなかった。