ユリカモメが鴨川にやってきた。冬の季節になると、ユーラシア大陸から日本に渡ってくる代表的な渡り鳥だ。『伊勢物語』業平都落ちの段で、隅田川で一行が「これなむ、都鳥!」(これこそ、都鳥ですよ!)と見かけて京の都を懐かしんだ鳥は、このユリカモメのことであるという。
固まって日なたの川面に休んでは、時々集団で飛び移る。といってもさほど遠くに行くわけでもなく、100メートル程度の距離をあちこち移動するだけだ。時に橋の上を乱れ飛んで、通行人や観光客を驚かせる。
冬の間じゅう橋の下の川でのんびり暮らしているが、その辺の人間たちよりもはるかに遠い距離を旅行している者どもだ。人間の方が、連中よりもよっぽど視野が狭いのかもしれない。