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Swan Upping - スワン・アッピング(伝統行事)

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スワン・アッピングとは、イングランドで毎年恒例行なわれる儀式的かつ実利的活動である。テムズ川のコブハクチョウ mute swan を取り囲んで捕まえ、印を付けて放つことを行なう。

伝統的に、英国王室はテムズ川の印のないコブハクチョウの全ての所有権を持っている。この権利は、12世紀に遡る。当時、ハクチョウは王家の食事の食材として普通だったのである。スワン・アッピングはそのハクチョウの頭数調査を行なうのが目的なのである。15世紀の王室特許状 Royal Charter に基づいて、ロンドンシティ同業組合 Livery Companies of the City of London の二つである葡萄酒商組合 Vintners' Company と染物業組合 Dyers' Company とが、王の所有権を分有する権利が与えられている。両組合は、ハクチョウの足にリングをはめて頭数調査を行っている。しかし今はもうハクチョウを食べたりしない。

スワン・アッピングは、毎年七月第三週に行なわれる。儀式の間、女王陛下と葡萄酒商組合と染物業組合のスワン・アッパーが、小型舟を漕いでテムズ川を遡る。スワン・マーカー(マーカー・オブ・ザ・スワンズ)が指揮する女王陛下のスワン・アッパーたちが捕まえたハクチョウには、印がつけられない。一方染物業組合が捕まえた分には片足にリングがはめられる。また葡萄酒商組合が捕まえた分には、両足にリングがはめられる。もともとハクチョウにはリングではなくて、くちばしに傷をつけていた。この慣習は、"The Swan with Two Necks"(二つ首のハクチョウ)というパブの名前にその名残をとどめている。この名は、"The Swan with Two Nicks"(二つのきず跡をつけたハクチョウ)が転じたものなのである。

mute_swan.JPG

コブハクチョウ(mute swan)


イギリス王室は、いろいろヘンテコな伝統的権利を持っている。テムズ川の上に生息する印のないコブハクチョウの所有権を「持っていた」のではなくて、今でも「持っている」のである。その所有権を分有する権利が与えられた二つのロンドンシティ同業組合であるが、これが面白いことに中世のギルドに由来する各種業界団体でありながら、いまだに新規の業種の組合が続々と結成されている。IT同業組合国際トレーダー同業組合経営コンサルタント同業組合税務アドバイザー同業組合、、、、これらはいずれもロンドンシティ当局の許認可を受けて、立派な憲章 charter を持ったギルドなのである。ただし伝統的組合のように、組合所有のギルドホールを構えるようなことはさすがにしていないようであるが。ましてや女王陛下から特権を賦与されるようなことも、もはやない。たぶん。

このスワン・アッピングは毎年七月第三週に行なわれる、イングランドの年中行事である。テムズ川をロンドンからちょっと遡った、ウィンザー Windsor やイートン Eton のあるバークシャー Berkshire で行なわれる。今年2006年は、7/17 - 7/21の間に行なわれた。行事の歴史や写真は、Wikipediaよりもむしろ英国のこのサイトの方がくわしい。元々の歴史はコブハクチョウがステイタスの高いご馳走であり、それゆえ王の許可なしに勝手に捕獲することを禁止したところから始まる。スワン・アッピングは新しく生まれたハクチョウに印をつけて、所有権を確定することが目的であった。孵化の季節に鳥を追いやったり卵を盗んだりした者は、懲役刑に処せられた上に罰金を課せられた。王の所有権を分有した葡萄酒商組合と染物業組合もまた、ハクチョウに組合独自の印を付けた。染物業組合はくちばしの片側に印の傷を付け、葡萄酒商組合は両側に傷を付けた。この葡萄酒組合の印が、上の記事で言及されているパブの名前の起源である。

今はハクチョウのくちばしに印をつけたりせず、リングをはめている。行事の目的も食材探しではなくなって、むしろ野鳥の統計を取って保護に役立てるのが目的である。優雅な行事を担当する公職までが存在する。「マーカー・オブ・ザ・スワンズ」 Marker of the Swans という役職で、スワン・アッパーの時に女王陛下の舟隊を指揮して、新しいハクチョウに印(マーク)を付ける。いや、今は女王陛下の所有分には、もう付けないことになっている。だから、役職名と実際の職務は矛盾している。