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静かに、散る - 八坂鳥居

(カテゴリ:半徑半里圖會

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さくらさへ紅葉しにけり鹿の声(明和八年九月三日)

蕪村のこの句が詠まれた旧暦九月三日は、新暦ならば十月十日ごろに当たるようだ。秋になれば、桜の木すら紅葉するのをあえて面白がった句だ。下の句には紅葉につきものの「鹿の声」を置いて作った非常に構成的な臭みのある句で、この句が詠まれたときに「鹿の声」が本当に聞こえたかどうかなどを詮索することすら、愚かというものだ。



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とにかく、桜も紅葉する。だがカエデやハゼ、ウルシのような鮮やかさは一切なく、かと言って柿紅葉のような枯れた味わいもない。一斉に色づけば風情も出てこようが、たいていはさみだれに色づいては落ち、風吹くたびに飛ばされて、次第に葉の数を減らしていく。桜の名所も秋の季節には誰も注目しないゆえんである。

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だがこうして鳥居を借景として従えれば、少しは絵にもなるというものだ。春のわずか一週間あまりの間だけ皆にちやほやされた桜の木は、その後葉桜となった以降は目に留められることもなく無視されて、秋にこうして静かに散っていく。