肉がそんなに好きなん?
恩主公さんは、交通のアクセスがあまりよろしくない。最寄のMRT(地下鉄)の駅がなくて、西の民権西路駅までずいぶん長距離を歩いた。もともと恩主公さんは原野の中の敷地に建てられたというから、中山区の北のあたりはごく最近の台北市の膨張によって開けたのだろう。
平日の夜だが、すごい活気だ。香港・九龍の夜市よりも規模と人々のエネルギーで上回っている。台北人のナイトライフは、市内中心部よりもむしろこういうところの方が盛んなのだろう。頂好あたりのいい店に集まったとしても、その後には市内各地にある夜市に行くのが一番楽しい夜の過ごし方なのではないか。この情景を見ると、確かに台北はアジアの大都会だ。
ここでも、私はまず生フルーツジュースを飲んだ。屋台で芭樂(パーラー)と書かれたフルーツのジュースを、注文した。これは台湾の地方名で、グアバのことである。ナシのような酸味がして、やっぱりうまい。暑い夜には持ってこいだ。
これは、愛玉冰(アイユービン)。「愛玉子」という果実から作った冷やしゼリーである。大きな鍋に入れて売っている。上に乗っているのは、レモン。
こんなふうに、ゼリーをコップにすくい入れて、ストローで飲む。ゼリーじたいには味がない。上に蜂蜜とレモンのシロップをかけている。飲むと、シロップの甘酸っぱさがまことに爽快である。ただし、途中でシロップを吸い尽くしてしまって、下の方になると味がなくなる。それがまた、チープでよい。
ザリガニ釣りの屋台が出ていた。アメリカザリガニでない、川ザリガニだ。台湾ではまだ生息しているのだろうか。
揚げ鶏の店。鶏の足や脖子(ネック)などが、安い。他にも豬血糕(豚の血を固めた食品)や各種のモツ焼などが、至る所の屋台で売られている。とにかく、肉、肉、肉。日本の祭りの屋台では、お好み焼きやたこ焼きなどの粉モノか、ソーセージやトウモロコシなどの串焼きモノか、あるいはお菓子が大部分を占める。だがここではそういったものも確かにあるが、一番多い屋台は肉やモツの焼き物・揚げ物である。肉が大好きなのは、古来から中国文化圏の人々の性分なのであろう。古典などを読んでも、ご馳走として出てくるのは必ず牛・豚・羊の炙(焼肉)か羹(スープ)か膾(刺身)。米や魚は、ご馳走の価値としては肉よりずっと落ちる。そのあたり、縄文時代から魚を食べ続けてきた日本人と少しご馳走の感覚が違うように思う。
夜市の真ん中にあったお宮さん。目にも鮮やかで、細工も細かい。豪華な神輿や山車(だんじり)が、年中出張っているようなものだ。この士林夜市も、一年間ずっと祭りのようなものだろう。
日が変わるまで開いている夜市であるが、私は電車がなくなってしまわないうちに退散することとした。帰りがけに「金石堂書店」というかなり大きな書店に寄って、現地の本を何冊か購入した。台湾ではPC関係の本がどのぐらい充実しているのだろうかと興味を持って、棚をのぞいて見た。PC関係の本は、一つのコーナーをなしているほど多く置かれていた。内容もある程度の水準にはあるようだ。独自のブログデザインの作り方などについての本は、日本の本に比べて少々内容が薄いと感じたが。私は基本的に文系的頭脳なので、専門的な内容を突っ込んで書いた専門書よりも、豊かな展望を示してくれる解説書の方を高く評価する。そういった文系的センスの解説書は、日本のものより読者を高度な応用まで引っぱって行ってくれるような内容でやや遅れを取っているような印象がする。だが、本の中身を見ると、日本発のサービスやソフトが、日本語のままの画面で紹介されている。この地の人々がPCに興味を持ったら、しぜんと日本語に触れざるをえないのだろうな、などと思った。この書店のレジでは、日本語が通じなかったが。