盛夏は見る花も少なくて、もうひとつ面白くない。
『蕪村句集』の夏の部も、暑気払いの涼しさを求めた句が多い。
石工(いしきり)の鑿冷やしたる清水かな(明和五年五月十六日)
夏河を越すうれしさよ手に草履(宝暦四~七年)
蚊帳の内にほたる放してアヽ楽や(明和六年五月十日)
家の中にほたるを放す趣向など、今の都会では、もう望むべくもない。
木屋町にいた、ハグロトンボ。京都は背後に山があるから、いくぶんかは山の清い流れが市中に送られてくる。市中の風景にも、少し遠くにある山の気が力を貸しているのだ。借景ならぬ、「借気」の風景とでも言おうか。
すヾしさや都を竪(たつ)にながれ川(明和年間)