祇園・建仁寺の南隣にある禅居庵の境内に入ると、いろいろな表情をしたいのししが出迎えてくれる。狛犬やキツネのいる寺社は珍しくないが、いのししのいる寺は珍しい。
いのしし(猪、亥)は、インドの軍神摩利支天(まりしてん)の乗り物である。いのししのひたすら敵に突進する猪突猛進(ちょとつもうしん)、猪武者(いのししむしゃ)ぶりが、軍神の乗り物としてふさわしいと考えられたのであろう。
本尊の摩利支尊天を安置する摩利支尊天堂は、信長の父、織田信秀が天文十六年(1547年)に寄進した堂である。正面の装飾にも、やっぱりいのししがいる。
この寺は、亥年生まれの人にご利益をもたらすと言われている(残念ながら、私は亥年ではない)。七百年近く前に創建された、歴史のある寺である。