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舞茸のかやくごはん

(カテゴリ:"C"級グルメ道

油と相性のよいマイタケを炊き込んだ、かやくごはん。ごぼうをたっぷり入れて。

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米に山海の珍味を混ぜて炊き込んだり炒め合わせたりする食べ方は、パンにいろいろ工夫をこらして菓子パンにしたりサンドイッチにしたりするのと同じことであって、誰でも思いつくものであろう。現に韓国・中国料理から始まって、ベトナム、インドネシア、タイ、インド、トルコ、イラン、イタリア、スペイン、アメリカ南部まで、およそ米を食べている地域にはそれぞれの流儀の「味付け混ぜご飯」がある。関西発祥の言葉であるとされる「かやくごはん」(いろんな薬味を加えた「加薬ごはん」が本来の意味)もまた、日本全国に分布している炊き込み/混ぜごはんのバリエーションの一つにすぎない。

私の愛読書の一つである、吉田健一の『私の食物誌』(初版昭47.11、中央公論社。現在は中公文庫で入手可能)には、「大阪のかやく飯」についての項目が書かれている。

それで混ぜ御飯ももう忘れられているならば大阪のかやく飯の説明もしなければならなくて、これは油揚げとか人参とか牛蒡とかを飯に混ぜるのではなくて初めから米と一緒に炊き上げたものである。その作り方からして恐らくこれは家庭料理だったのに違いないが、それを主に売っている東京風に言えば食堂が大阪には方々にある。あの味を思い出すと東京の混ぜ御飯と比べたのが悪かった気がする。再び今日の東京風に言えば家庭的とか庶民的とかいう愚にも付かない形容詞を並べることになりそうであっても、これはそのようなことと凡そ縁がない本ものの食べものの味がする。その作り方、であるよりも材料を説明しただけでそれは解る筈で油揚げその他を米と炊けばそうして混ぜたものの味が飯に染み込む訳であり、油揚げと人参と牛蒡と、その他に椎茸、蓮、豆などの味が米の味と一緒になったものがどんなものか、これは説明の域を越えて大阪で食べて見る他ない。

吉田は、大阪でかやく飯と粕汁と煮締めで東京の天ぷらそば位の値段で食事ができることが、同時代の東京では考えられなくなってしまった「贅沢」であると書く。そして、「贅沢が値段の上下、外見の地味とぴかぴかなどと関係がな」く、「現在の東京では贅沢という言葉が忘れられてその代わりに豪華という言葉が使われている」と嘆くのである。

だが遺憾ながら、ここまで吉田にヨイショされた大阪の味の精神が、現在でも受け継がれているとは正直私の実感から言って非常におぼつかない。それはともかく、彼が何をもって「贅沢/豪華」の線引きをしたか。それは、以外と(いや、当然のことながら)現在のスローフードとかロハスとか言われていることと、一緒なのである。

Nothing is new under the sun. 日の下には新しいものはない。(聖書『伝道の書』より)




(以下は、2合分の分量)

米 カップ2
だし カップ2
しょうゆ 大さじ2、塩 少々、砂糖 小さじ1/2
マイタケ パックものを、半分
ごぼう 1本
にんじん 10cm
薄あげ 1/2枚
酒、サラダ油、酢




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ごぼうの前処理。まずよく洗って、包丁でしごいて表皮をこそぎ落とす。たわしでゴシゴシこすってもいいです。それから鉛筆を削る要領で、ささがきに作っていく。え?鉛筆なんか削ったことない?、、、そうですか。でも、市販のパックのささがきごぼうを使うよりも、こうして手で作ったほうがずっと香りよいものができると思うんだけれも。とにかく細切りにすれば、いいんです。


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作ったささがきを、酢小さじ1を入れた水に漬ける。


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にんじんは拍子切り(マッチ棒のように細長い切り方)に、油揚げは同じ長さで細切りに。マイタケは包丁を使わず、手でちぎる。


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米はといだ後に、普通の水を入れて30分以上置く。炊き上げる直前に水を捨てて、だし・しょうゆ・塩・砂糖を入れてよく混ぜる。こうした方が、米がよく水を吸って炊き上がりがよい。もともと米はそのままでも味わいがあるのだから、最初から味付けをしただしに漬け置く必要なんか、さらさらないのです。


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鍋に油大さじ1を入れて熱し、水切りしたごぼう・マイタケ・にんじんを入れて炒める。ごぼうの香りが出てきたら、酒大さじ2を入れて味を付けて、取り出す。


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さきほど炒めた食材に油揚げを混ぜて、米の上に乗せて炊き上げる。


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マイタケのコクと、ごぼうの香りが心地よい。ごぼうの代わりにセロリを使っても独特の味わいがでるが、セロリの場合炊きたてはいいが時間がたつとしなびてしまうのが難点。
残った分はラップをかけて冷蔵庫へ。冷えたものも、昼にうどんやそばと一緒に食べるとうまい。電子レンジで温め直してもよい。