英語と日本語は、料理法の用語に微妙にずれがある。
日本語で「焼く」に当たる英語は? ― 主に使う言葉として、"bake"、"grill"、"broil"、"roast"、"toast"、"sauté"の六語がそれに当たるであろう。
まず"bake"はパン・豆・じゃがいもなどの肉ではない食物を油なしで焼き上げる料理法を意味する。"grill"及び"broil"は、肉や魚の直火焼きについて用いる。"roast"はローストビーフなどのような、遠火のあぶり焼きである。それと一字違いの"toast"はパンやチーズを焼く場合にもっぱら用いる。といっても、"bake"と違ってすでに食品としてできあがっている食パンなどを改めて料理として焼く場合に限る。最後に"sauté"はフランス語からの借用語で、油やバターを使ってフライパンの上で焼く料理法である。
このように、さすが肉もパンも焼くことが料理の基本である西洋社会は日本よりも「焼く」方法を細かく区別していると感心してしまう。ところが他方で、我々が当たり前に区別してイメージできる「炒める」と「揚げる」の区別が、英語にはないのである。すなわち両方とも英語に直せば"fry"(あるいは"frizzle")の一語なのだ。あえて「揚げる」という意味を強調したければ、"deep fry"と言わなければならない。
さらに言えば、熱い液体の中に入れて火を通す料理法は、日本語では「煮る」(または「炊く」)と「ゆでる」(または「ゆがく」)の二語を用いる。「煮る」はだしやスープの中に入れて火を通し、たいてい液体ごと頂く料理法であって、他方「ゆでる」は味付けしない湯の中に素材を入れて火を通す料理法で、ふつうはゆでた後の湯は捨ててしまう。これらの料理法について、英語はどのようになっているか?
― それらは、"boil"、"poach"、"simmer"の三語で区別されている。ところがこの三者の区別は「火加減の調節のしかた」であって、日本語の区別とは異なっているのだ。すなわち、まず"boil"は沸騰した湯でカンカンにゆで上げる料理法である。次に"poach"は、沸き立たないよう火加減に気をつけながらゆで上げる方法である。これはポーチドエッグを作るときのように、湧き上がったら形が崩れてしまうようなもろい素材をゆでる際の火加減について特に指した用語なのだ。最後に、"simmer"とは弱火でふつふつと長時間ゆでる方法を指す用語である。
違った言葉では、このように料理法に対する強調点が違ってくる。それはおそらく料理に対するイメージの違いにまで行き渡っているのであろう。我々日本人は「揚げ物」を食べ過ぎると健康に悪いと直感的に思っている。しかし、中華などの「炒め物」についてはそのようなイメージをたぶん持っていない。だが英語の話者から見ればどちらとも"fried dish"で、不健康なことには変わりがなく見えるのではないだろうか?
(以下は、1人前の分量)
・ポークソテー
豚ロース肉 1枚 |
メリケン粉、塩、こしょう、油 |
《ガーリックソース》ケチャップ 大さじ2、にんにく 1/2かけ |
・にんじんのグラッセ
にんじん 10cm |
バター 大さじ1/2、砂糖 小さじ1/2、塩 小さじ1/4、水 |
焼き上がりをきれいにするために、豚ロース肉を整形手術しておく。白身と赤身の間には筋が入っていて、これが火を通すと縮んで肉がえびぞりになる要因となる。それを防ぐため、包丁で筋のところどころに切れ目を入れておくのだ。包丁を入れた後で、塩こしょうを少々ふる。
バットか大皿にメリケン粉をまいて、肉にまんべんなくまぶす。
まぶした後、このように余計な粉ははたいて取ってしまう。薄化粧でなくてはならない。厚化粧だと焼くとぶよぶよの塊ができてしまいます。
さて今回は付け合せとしてにんじんのグラッセも作ってみよう。にんじんを長さ5cmに切って皮をむき、二つ割りにする。太い場合には、三つ割りまたは四つ割で。
鍋ににんじんを入れ、ひたる程度に水を入れる。そこにバター、砂糖、塩を入れて、弱火で煮る。時々鍋をゆすってにんじんを転がす。水があらかた飛んでしまえば完成。
ポークソテーに戻る。フライパンを強火でよく焼いて、油大さじ1を入れて熱する。そこに豚肉を入れて、表面を焼き付ける。
両面が焼き上がったら中火にして、フライパンをこそげながら中身まで焼く。このようにそり返りがなければ、2分もすれば中まで焼き上がるだろう。
肉を取り除いた後の油ににんにくを入れてチリチリ炒め、ケチャップを投入する。フライパンのうまみを全てソースに寄せ集めてしまおう。
皿にポークソテーを置いてソースをかけ、レタスと、先ほどのにんじんのグラッセを添える。