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この流れよりも速く - 琵琶湖疏水

(カテゴリ:半徑半里圖會

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琵琶湖疏水は、比叡山脈をトンネルでくぐり抜けた後、山科盆地でいったん地上に出る。天智天皇陵の北辺をかすめて、盆地の山すそを通る。そして再び粟田口の坂に至ってトンネルをもぐり、蹴上の浄水場前に湧き出して、京都盆地に水と電力を供給することとなる。言うまでもなく、明治時代に京都府の総力を挙げて行なわれた一大近代化事業であった。開通当時は蹴上に残るインクラインが象徴しているように、水運のためにも利用されていた。むしろ当初は水運を主要な目的として企画されたのであったが、やがて時代が進み鉄道の利便が発達するにつれて、内陸の水運交通はアナクロになっていった。昭和初年には、もはや若干の観光船が通る程度となっていたのである。現在は、特別な催し物のため以外には、舟が通ることもない。


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山科地区の疏水のほとりは、紅葉の隠れた名所である。五月新緑の頃のみずみずしい青葉もまた格別すばらしいが、晩秋の季節はやはり心を打つ景色となる。紅葉の下、運河の水が流れていく。開通時は格別モダンであった人工の川も、百年の時を隔てて今やすっかり歴史の中に落ち着いてしまった。時はこの水のように誰が気にせずとも流れていき、全てを過去に置き去っていく。



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紅葉は今が盛りだが、他の落葉樹たちは一足早く散り果てようとしていた。全ては過ぎ去り、そして次の季節へと更新されていく。各人はその無常な流れの中で、生きていくしかない。