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悲鳴を上げる中国農業 - 日経オンライン記事

(カテゴリ:東北アジア研究

ある教授が農村で目にした“悲惨な病理"

話し手は、愛知大学の高橋五郎教授。まず自ら、「中国専門家」ではなく、「農業の専門家、食料の専門家」であると、断ってからの、インタビューである。ゆえに、教授は農業・食料の専門家として中国農業の実態について、語る。

日本でもさみだれ的に報道されている中国農業の恐るべき汚染実態を、高橋教授もまた述べる。


―― そう考えると、土作りや水の管理、肥料の使い方、循環の手法などについて、国や企業がもっとコミットすべきなのでしょうね。

 高橋 何らかのルートでコミットすべきでしょう。ただね、農民に教えることは大切だけど、何せ数が多い。日本の場合、農協などに農家を集めて研修や講習会を開くことができる。ところが、中国の農村では、どこを見ても農民を集める施設がないんですよ。従って、一人ひとり相対で教えていくしかない。これはものすごい時間がかかる作業です。

中国には、技術指導などを担う農業専業協会という農協のような団体があります。ここの指導員を教育するという方法はありますが、先ほど述べた理由で、指導員が農民に指導していくのもえらく手間がかかる。コミットするとしても、相当に大変だと思いますよ。

高橋教授は、農業の技術が立ち遅れている原因として、土地の公有制度を挙げる。これは、さきほど政府が、農民に対して土地の一定の使用権を認めて、資産として活用することを認めた立法を通した、と聞いていた。いったい、いまだに実行化されていないのだろうか。農村の購買力を上げる、という中央政府のスローガンは、いつになったら末端にまで政策が行き渡るのであろうか。

それにしても、上の引用などからも垣間見えるように、地方政府の無能と非能率さは、ひどいもののようだ。農村を貧窮させ、汚染への関心を失わせている最大の障壁は、中央と地方の政府なのではないか。いまだに、首都が作った法を広大な天下に一律に当てはめて、地方には中央にしか目が向いていない、金権まみれで直近上位の役人の監視の目しか気にしていない、非能率な役人ばかりしかいない。帝国時代から、進歩していないではないか。もっと、人民の幸福を願う有志の者が、法によって処罰されることを恐れずに、自発的な力を発揮できるような社会に作り変えることを、望む。もういいかげん『韓非子』流の統治政策は、捨てなさいよ。

コメント (1)

日本ですら、中央で決めたルールを地方へ画一的に押し付けることへの弊害が出ているというのに、その優に数十倍の国家規模を持つ中国で同じようなことをしていたのでは、効率とか、適正措置などというものを実現することがほとんど不可能であるのは想像に難くない。

かつて私は、中国が各地方に分裂し、それぞれがそれぞれの道を進むさまを夢想したことがある。

いや、それは単に一人の男の夢想に過ぎない。しかし、実のところ中国は、統一よりもむしろ分裂の方が常態であるとも言えるのだ。

まあ、君には釈迦に説法だったね。

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