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傷に塩を塗るのか(Salt in their wounds)-The Economist記事

(カテゴリ:東北アジア研究

今週号記事を、訳す。

犯罪者扱いされる、遺族の親たち(Bereaved parents treated like criminals)

「災害地域の市民は、新しい生活に向けて行進中であります」と、胡主席は宣言した。
五月十二日。四川省での地震が、8万6000人以上の死者及び行方不明者を出し、数百万人の家を奪った、一周年のことであった。
しかし、主席がいう中国の巨大な救助活動が納めた勝利宣言にもかかわらず、生き残った人々の中には非常に不満が残っている。

中国の地震に対する迅速な対応は、そのスピードとオープンさで、国際的賞賛を勝ち取った。ふつう、ジャーナリストは災害の現場から、締め出される。しかし、今回は、おおむね無制限のアクセスが許された。しかし、当局はすぐにつぶれた学校によって圧死した幾千のこどもたちの怒った親類たちに近づくことを、制限しようとし始めた。主席が震源地近くで巨大な被害を受けた映秀であった、外交官が出席したセレモニーの席で一席ぶっていた頃、その地区の警察は、家族たちが苦情をメディアに載せようと試みるのを阻止するために、取締りを強化していた。

映秀の東南約20kmにある聚源の町では、警官が立ち入り禁止となった中学校の残骸を、取り囲んでいた。そこでは、数百人の生徒が、死んだところだ。外国のジャーナリストは、現在地震の被害地域からレポートするためには、政府に登録しなければならない。周辺の都江堰市の役人は、聚源に本誌記者が行くならば、当局の介添えを連れて行くようにと主張した。しかし、いざそこに着くと、黒シャツの警備員が直ちに一行をストップさせた。彼らは我々を警察署に連れて行き、そこで役人が、「聚源は『特別管理』状態にある」と、宣言した。

聚源中学校近くの建物には、地震のダメージはほとんど見えなかった。
親たちは、疑っている。これは、学校の建物よりしっかりと建てられていたから、こうなったのだと。地震から数日のうちに、高位の役人たちは、いいかげんな建築が7000以上の教室の崩壊の原因であったのか調査することを、誓った。しかし、この問題は、すぐにトーンダウンされた。政府が最終的に死亡・行方不明の生徒の人数(5335人)を公表したのは、一周年記念日のたった数日前のことであった。しかし、役人たちは、同時に主張した。稚拙な建設が原因で崩壊した学校は、ひとつもなかった、と。

Juyuanの遺族の親たちは、納得がいかない。中学校で死んだ15歳の息子の父親は、地方政府が調査を恐れていると、批判する。
「腐敗が、あるからだ。」
当局は、この男性と他の数人の親を、5月12日に観光旅行ツアーに合流するように、要求した。どうも、一周年に町から遠ざけるのが、目的のようだ。中国の厳格な一人っ子政策のために、多くの親はたったひとりしか、子供がいないのだ。

北京では、あのオリンピックの「鳥の巣」をデザインした著名な艾未未が、50名以上のボランティアを組織して、地震地域を旅行して、死亡した学生生徒たちの名前を集め(彼は、7000人以上はいるはずだ、と確信している)、親たちの声を聞こうと企画した。彼が言うに、チームは道中、警官に20回以上止められているという。警官はたいてい彼らが取った記録を没収し、消去し、そして、これ以上続けたらもっと重く処罰するぞと、脅した。二度、ボランティアは殴られた。犠牲者の親たちと、外国ジャーナリストたちもまた、同じような目に会っている。親たちは、抗議するなと警告されている。それを拒否した親たちは、こう言われている。「法輪功の、支持者か?チベット独立運動の、支持者か?」-艾氏は、こう語る。

当局は、直接的には艾氏の活動を阻止しようとしていない。しかし、北京のインターネットポータルは、しばしば彼がやろうとした署名活動の更新についてのブログ記事を、消去している。3月、四川省の警察は、活動家Tan Zuorenを逮捕した。彼は、Ai氏と同様の企画を実行している人物であった。彼は、現在も拘留中である。Huang Qiもまた、拘留中である。彼は、崩壊した校舎についての情報を集めた後、国家の機密情報を保持していたとして、昨年訴追された。

艾氏は、「中央のトップが政策の失敗について認めるのを拒否することは、親の不満を増すだけだ」、と語る。90年代、中国全土で、いいかげんな作りの学校が建てられた。それは、政府が義務教育九年政策の徹底のために、十分な教室の確保へと動いたからであった。建築費は、中央政府と地方政府の両者で、拠出されるはずであった。しかし、地方政府は、しばしば金を出さなかった。こうして、質の劣化が起こった。

今月、学校と病院は四川地震にだいたい等しいマグニチュード8に耐えられるように造られるべき法が、施行された。だがこんなことは、聚源の怒る親たちにとって、何の慰めになろうか。彼らは言う。「地方政府は、草ぼうぼうの学校の敷地に行って、冥福を祈ることすら、禁じているんだ…」