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台北四十八時間 06/06/29AM00:30

(カテゴリ:台北四十八時間

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西門町の『夫婦春秋』


さて、日付はもう変わってしまったが、このまま寝るわけにはいかない。こんな時間だから大それたことはできないながらも、街中に出てみようではないか。

ホテルのすぐそばに、食べ物屋が集まった一角が何ヵ所かあった。その一店に入る。



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一ヶ月前からちょっと勉強してみただけのニセ漢語で、またも注文してみた。


「來牛肉炒面、跟啤酒!」(漢語初級篇)

― 牛肉ヤキソバとビールくれ!


本当のところを言うと、こんなにテキパキと言っていない。それに「牛肉炒面」は、メニューを指しながら言ったのだが。


この台湾ビールと、日本のキリンビールが市場の主導権を握っているようだ。

「牛肉麺」の一バリエーション?

ということで、台湾ビールと、牛肉炒面。


牛肉炒面は、どうも米條つまり米の麺であるようだ。少し歯ざわりが違う。コショウをちょっと効かせすぎではないかと感じたが、かと言ってコショウを控えたら味にパンチがなくなってかえってまずくなってしまうかもしれないとも思った。何にせよ、60元(210円)だからコストパフォーマンス的にはまあまあだ。

ビールをビン半分ほど飲んだ頃に、店のお姉さんがクラッシュアイスを一皿出してくれた。ビールにこだわる奴ならば絶対いれないだろうが、私はかまわずコップに入れた。

横でテレビを流している。歌番組で歌われているのは、村田英雄の『夫婦春秋』。♪明日のメーシさーえー、なかっーたーな、おまえ♪という歌だ。もちろん漢語で歌っているが。戦後かなり長い間日本文化の放送が表向き禁止されていたはずなのに、ずいぶん古い歌が受け入れられているものだ。その次に歌われたのはやっぱりおなじみの曲で、『時の流れに身をまかせ』だった。、、、あ、テレサ・テンは台湾人だったか。

先ほどはインチキ漢語で注文して、しかもメニューの発音ができなかったから外国人だというのは店の人もわかっていたのだろう。お勘定で「日本人ですか?」とお姉さんに聞かれてしまった。日本語で言っても通じたかもしれないな。まあいいや。


店を出て、通りの屋台で焼いていた香腸(ソーセージ)を買い食いする。一本30元(105円)。脂っこくて甘ったるい。私としては、二本を続けて食べられない味だ。

しばらく、北に南にと西門町の通りをうろうろしてみた。平日の深夜0時を回った時間とはいえ、あまり人が歩いておらず意外と淋しい。東京とは比べものにならないし、香港よりもにぎわいの密度としては薄いように感じた。台北はまさしく名古屋や福岡といった、日本の中堅都市クラスの繁栄なのだろう。この九州と同じぐらいの大きさの島の首都としては、適正な人の集まり方なのではないだろうか。

多少とも店が集まった一角には、必ず一人の警官がイスを立てて座っていた。ごみ収集の清掃車がやって来たら指導していたので、飲食店舗のごみ処理の監視も任務としているようだ。台北市政府環境保護局のサイトを帰ってきてから調べたところ、民国九十二年(2003)から通行者専用ごみ容器を設置し始め、ごみ投棄のはなはだしい地点に巡査や監視員を派遣し出したという。要は、行政として遅まきながらいろいろと監視しているのだろう。旅行者にとってはあまり気持ちのよいものではないが、通りのあちこちにそれでも散乱している大量の飲食物の包装容器などを見れば、ある程度は監視もやらざるを得ないとも言えるだろうか。盛り場での市民のモラルが地に落ちているのは、日本も台湾も事情は同じなようだ。

しかし結局この旅行の間いろんな通りを歩いたが、市内中心部の幹線以外では街頭ごみ容器を見かけることがなかった。行政の事業はまだまだ端に着いたばかりなのであろう。便利商店(コンビニ)にもごみ箱が普通置いていなくて、買い食いなどした後にはやむなく包装容器を折りたたんでポケットの中にねじ込んでいた。街頭にごみがこんなに散乱しているのも、ごみが出るところにごみ箱がないからある程度必然の結果だとも、言えなくはない。だがコンビ二にも街頭にも随所にごみ箱が置いてあるにもかかわらず、バカタレどもはやっぱりその辺にポイ捨てするのであって、おかげで日本の京都の四条河原町あたりの状況は悲惨そのものだ。花見や祭りのときなどコンビニのごみ箱に委細かまわず廃棄物を押し込んで、一杯になってもまだ投げ入れるから、外にまであふれ出して戦慄的光景を作る。おかげで花見風情もだいなしだ。そうやって考えると、結局日本のように街頭にごみ箱をたくさん置こうがこの台北のように全然置いてなかろうが、捨てる奴は捨てるのだから一緒なのかもしれない。モラルのお説教をしてもどうせ聞かない人間は聞かないに決まっていて政策的効果は期待できないことは、いにしえの時代の法家思想家たちがつとに説いたところだ。だから彼らは法によって「道に灰を落としても処罰」する道を提唱した。この夜の街頭を見る限り、日本も台湾も人間のモラルに期待する儒家的な思想でまちをきれいにすることは期待できない地点に来ているようだ。だから、法と警察の登場となるのだろうか?


食べ物屋に入った話から始めたのに、いつのまにかごみの話を書いてしまった。とにかく一日目の歩きはこのぐらいにして、深夜一時過ぎにホテルに戻って休んだ。本格的に歩くのは、明日からだ。


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