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Korea!2009/02/16その三

(カテゴリ:韓国旅行記
そんなわけだから、私はときどき車をとめて飛びおりては、道をゆく韓服の老若男女に、西面廠舎はどういけばいいのですか、とたずねた。かれらは親切におしえてくれたが、なかには徒歩でゆく感覚でもって、
「ここをゆけば近道ですよ」
と、大まじめで、戦車がもぐりこめば家がバラバラになってしまいそうな家と家とのあいだの露地を指さした。
(『街道をゆく 韓(から)のくに紀行』より)

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夜、西面(ソミョン)に、行ってみた。
帰国して司馬遼氏の『街道をゆく』を読み返して、ここが大日本帝国の崩壊直前に、彼が戦車隊を率いて四苦八苦していた土地であったことを、知った。

現在の西面は、台北の頂好(ディンハオ)を思わせる、急成長中の新都心だ。
しかし、頂好よりも、国の規模の分だけ、街が大きい。
韓国第二の都市で、結構な規模だから、ソウルの巨大さが想像できる。
それにしても。
また、与太話だが。
釜山の街並みを見ると、ぎょっとする建物にお目にかかることがない。
台北や上海で時折見かける、日本人の美的感覚から言って奇怪しごくに「どうしても見えてしまう」(悪気で言っているんじゃないよ。ただ自分が日本人なので、その感覚を述べたまでだ)建物が、ない。
西面のビルなども、日本にあってもしっくり来るデザインばかりが、揃っている。
美的感覚が両民族では近い、と考えるのは、即断だろうか。
そういえば、地下鉄の構内で、バッハがBGMとして流れていた。
途中に寄ったスーパーマーケットでは、私が大好きなバッハの『ゴルトベルク変奏曲』がBGMになっていたではないか。
この民族は、音楽的センスがあるのではないか?
なんてことを、思った。
西面から歩いた向こうにある大きな書店に、行ってみた。
本は、ハングルばかり。
当たり前。全く、読めない。
だから、台北では本を買ったものの、韓国では本を買わなかった。
せめてマンガぐらいならば?と思ってマンガコーナーに行ったが、あんまり規模が大きくない。
かつて池袋西武にあったリブロの荘厳な巨大さを知っている私にとって、この書店は小さなものに、思えた。

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これは、ポムネゴルという駅なのであるが。
島ホームになっている。
これならば、うっかり間違えて乗っても、無問題だ。じじつ、ポムネゴル駅の入り口は、上り下り共に共通の改札になっている。
私は、推理した。
-地下鉄は、何駅かごとに島ホームになっているのではないか?
そう思って、通り過ぎる地下鉄の駅のホームの形状を、観察した。
ポムネゴルから五駅、分離型ホームが続いた。
その後、中央洞駅で、また島ホームが現れた。
-もし乗り間違えたり乗り過ごしたら、何駅か乗って島ホームのある駅で、乗り換えろ。
釜山人の生活の知恵として、そうなっているのではないかと、推理した。
もしそうならば、わかりにくい。
私のように、マヌケな外国人に、優しくない。
韓国は東アジアはおろか、世界レベルでも相当の水準に達していると、私は街を歩いて思ったが、ただマヌケな私が思ったのは、もうちょっと世界中のマヌケに優しくあってもよいのではないかな、と思ったりした。
民族にとって自明の前提であっても、よそ者から見ればぜんぜん自明でも何でもない物事は、いっぱいある。
自民族の常識で物事を考えすぎる性癖のある日本人として、それがこの国に言いたいことの一つでありそうになった。
これもどうでもよいことなのだが、ホテルで飲もうと思って、コンビニでインスタントコーヒーをニ袋買った。
一袋目を開けると、ティーバッグのようなものが出て来た。
どうやって、飲めばいいんだろう?
私は、紙のバッグを開けて、紙コップに注ぎ込み、お湯を入れた。
飲んで、自分が間違っていたことを、知った。
やはり、ティーバッグのように淹れるのであった。一口飲むと、口中にコーヒー豆がじゃりじゃりとして、とても飲めなかった。
一杯を便所に捨てて、二袋目を開けた。別のタイプの、コーヒーを買っていた。
開けた途端、内容物が弾け出して、危うくホテルの部屋中をコーヒーだらけにしてしまいそうになった。
この袋は、インスタントコーヒーの要領だった。
同じ社が出している、同じ形状の袋で、コーヒーの作り方の前提が違っていた。
こんなもの、韓国人ならば常識として知っているのかもしれない。
だが、「同じ社の同じ系列の商品ならば、同じように作れるようにあらかじめ商品を調整してあるはずだ」という日本人の前提を無意識に持ち出していた私は、弾き飛ばされた。
-ほんのささいなことであるが、ここをよく考えれば、韓国は一段と商売が安定するのではないか。
私は、コーヒーを飲んで、そう思った。(コーヒーそのものは、じつに美味い。)

夜、夜食としてまたコンビニでパックのカレーを買ってみた。
コンビニで温めてもらって、ホテルで食う。
カレーだった。
甘ったるくもなく、スパイスの味わいを穏やかにまぶした、カレーであった。たぶん韓国人にとっては、これで大甘口なのであろうが。
やはり、この民族はカレーを分かっている。
それが、安心となった。