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Korea!09/03/11

(カテゴリ:東北アジア研究

鄭漢淑『旧家』

現代の訪れを描いた、短編である。
伝統ある両班の宗家が、因習にまみれた家父長制の家が、嫡孫である主人公の成長と共に、崩れ去って行く。しみじみとした悲しい語り方は、日本人にとっても親しみやすい一篇となっている。

それにしても、韓国の書き手にとって、日帝と6.25は、重たい。この二つの事件によって、半島は強姦されるように、現代の市民社会に突入させられた。彼らの市民社会化は、司馬遼太郎が日本について描いたような「明治よいとこ節」(批評家、高橋敏夫氏の表現)の調子によって、明るく描くことができない。現代の韓国人が自らの市民社会化の歴史を冷静に評価することが難しく、かえっていまの現代と前近代の時代を両方とも絶対肯定するような、日本人にとって奇妙な歴史感覚を選ばざるをえないのは、彼らの歴史がそうさせているのである。あたかも現代のロシア人が、忌まわしいながらも間違いなく現代社会を作り上げたソビエト時代を冷静に評価することができず、いまのロシアと帝政時代を両方とも称える歴史感覚の欠如に追い込まれているのと、相同していると思われる。