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Korea!2009/03/11

(カテゴリ:東北アジア研究
釜山港!関釜連絡線!そこは朝鮮人にとてどんなところであり、どんなものであっただろうか。

(金達寿『玄界灘』より)

在日朝鮮人作家、金達寿(キム・タルス)氏の代表作、『玄界灘』を読んだ。
前半は、文句なしに面白い。
この作品もまた、人間同士のぶつかり合いである。和解できないバックグラウンドが、ある。日本。朝鮮。征服者。被征服者。和解できない背景を背負わされた登場人物たちが、ギリシャ悲劇のように葛藤し、意識の上ではなかったことにしていた根本的な対立が、意識に上せざるをえない状況に追い込まれて、登場人物を切り裂いて行く。

後半は、つまらない。
作者の思想的立場から言って致し方のない、ことではある。
私は、全篇を義務として読んだ。
だが、読み物としては、残念ながら前半で終わっている。
後半は、コミュニズムに目覚め、反日独立運動に立ち上がるレールに、全ての登場人物が乗せられてしまっている。書かなければならなかったことは、分かる。しかし、それはもう物語ではない。
逸脱する個性があれば、もっと分厚い物語になったであろう。
日帝の人を人とも思わぬ暴虐な抑圧の下で、逸脱など許されない、許したくない心情は、痛いほどに分かる。
だが、最後に種明かしされる特高の「李元」のつぶやきなどは、もっと深刻な問題を、本当は示唆しているはずなのである。
そこを書かなかったのは、思想的制約であったか。
いまだ統一が成されていない悲惨の前に、描く筆先が震えたか。
残念な、小説である。そして、残念な、半島の現状である。