日曜日、カポタストをギターに装着して、夜、「吉水」の前の階段上で、私が歌詞を改作した『旅立ちの日に』を演奏してみた。
弾いて、夕映舎氏に聞かせた。
彼は聞いて、ううむと唸り、私に言った。
「今の今まで、お前は大変音階の幅が広い奴だと、思っていた、、、」
私は、自分でも歌がかなり上手いと、この時まで思い込んでいた。
自慢ではないが、私には絶対音感がある。
ギターの弦をポロン、と弾いた音を聞けば、それがGなのか、Fなのか、はたまたB♭なのか、分かる。
だから、私は歌がかなり上手いのだ、と、この時まで思い込んでいたのであった。
しかし、夕映舎氏は、言った。
「お前は、声に出して歌える音域が、相当に狭い。低音は声が出ず、高温は声がひっくり返る。今、お前に聞かせてもらった曲は、心に響かない。」
夕映舎氏は、私の替え歌バージョンで、自分で歌った。
きれいに、低音も高音も、通っていた。
このとき、いざ歌わせたら彼の方が私よりも上手いことを、長年の付き合いで始めて思い知った。
私は、歌がじつはあまり上手くないのだった、、、
夕映舎氏は、言った。
「お前、ブルース歌ってみろ。」
私は、正直言ってブルースが嫌いだ。
しかし、言われてみて、新井英一の『清河(チョンハー)への道』をもじって、即興で『慶尚道(キョンサンド)への道』をうなってみた。
日本の風が悲しいもので
私は、飛行機に乗っていた。
金海(キメ)に着くまで、1時間30分
サンドイッチ食う間もない、東京より近い
そう思って機内食見たら、チーズサンドだった
チーズ食えない俺だ、オイいきなり大凶かよ
夕映舎氏は、言った。
「お前は、ブルース声やで。お前は否定したいかも、しれんけどな。」
ダミ声向きだと、いうことなのか、、、
ううむ。
今の今まで、知らなかった。
しかし、自作の歌詞が歌えないのは、しゃくにさわる。
これまで『旅立ちの日』を弾く際には、原曲のB♭に合わせるために、私はカポタストを3フレットに着けていた。
こんなふうに。
それを、さらにずらして、4フレットに着けた。音階は、半音上がってBになる。
歌ってみた。
お!
いけるかも。
音域の狭い私にとって、カポタストはこれから必需品になりそうだ。