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『岸信介』原彬久

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「問題は、新条約の核心ともいうべき第五条とそれに関連する条項である、、、新条約第五条は、、、アメリカが日本領土を防衛し、日本が日本の施政下にある米軍基地を防衛するという、いささかトリッキーな内容をもつことになるのである。ところが、第五条はそれだけをみれば確かにトリッキーだが、この第五条の仕掛けをそれでよしとするほどアメリカは甘くない。第六条のいわゆる極東条項がこの「仕掛け」を十分説明している。」(p229)

日米安保条約は、第五条でアメリカが日本を一方的に防衛することを認める反対に、アメリカが極東(だけでない)地域に自軍を展開するための基地を恒常的に日本列島に確保することを日本に認めさせた、取引の条約である。

岸氏は、これを完全に日米対等するために、憲法とりわけ9条を改正しようと構想し続けていた。
安倍政権もまた、同様である。おそらく、9条改正→安保五条・六条改正→沖縄基地の削減と日本軍による肩代わり、という長期的シナリオであろう。いわば「9条を改正して沖縄を救う」という計であろうか。

アメリカとしては、在日米軍の価値は、極東地域へのプレゼンスを低コストで維持するところにあるはずだ。
かつては、極東最強国の日本と深い関係を保っておくという意味合いもまたあった。
しかしながら、現在アメリカは日本と中国の両方から利益を得ようと考えているはずである。中国からの利益を犠牲にしてまで、日米同盟を維持するメリットはもうないと考えているであろう。

9条をそのままにして、日米安保を破棄する道を取るとすれば?
その場合、日本は軍事力増強を行うしかないであろう。