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富-徳-位の三角形

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貨幣経済以前の社会では、この三者は社会的に厳密に一致するよう、社会的調整のメカニズムが働く。

しかしそこに貨幣経済が侵入すると、この三角形が崩れる。
すなわち、まず位なしで富を得る者が現れる。
富を位に依存せず得た階層からは、やがて教養を得て徳を習得し、既存の身分秩序に挑戦しようとする者が現れるだろう。こうして、位と徳もまた必ずしも一致しない、という民主的思想が始まるだろう。富・徳・位の三角形は、孔子の時代にいったん崩れることとなった。

孔子が最も称えた顔回は、徳だけがあって富と位がなかった。これは、徳が富と位から独立している、という孔子の認識があることは、疑いない。

新しい時代には、徳がある者が位を得て富を獲得し、新しく生まれた階層が新しく正義の社会を作る、という理想が生まれるだろう。堯舜伝説とか、伊尹の伝説などは、貧困な出自だが「徳」だけを持った人物が賢明な王に抜擢されて出世し、「位」と「富」を得るというストーリーが露骨に見える。